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イノベーションを起こすマーケティングとは?

ソニーとアップルのイノベーション

マーケティング
 
日本国内において、「マーケティングが強い」とされる企業は、たくさんあります。
かつて「世界のソニー」は、マーケティングが強い日本企業の代表的存在でした。
ところが2000年代に入って業績は悪化。その原因のひとつとして、ソニーにとって最大の武器であった、マーケティング力が落ちてしまったことが挙げられます。
皆さん、ソニーのヘッドホンステレオ「WALKMAN」(ウォークマン)をご存じですよね?
90年代にソニーが発売したこのウォークマンは大ヒット商品となりました。
どれだけの大ヒットだったかといえば、他社も同様の商品をリリースしたにも関わらず、ヘッドホンステレオ(ポータブル音楽プレーヤー)を見ると多くの人が「それウォークマン?」と聞く。
つまり、世間に「ヘッドホンステレオ=ウォークマン」という認識が定着したのです。
これこそが、まさに“イノベーション”でした。

スマホ=iPhone、タブレット=iPadの原点

最近では、この「ウォークマン現象」が、他のジャンルでも起こっています。そう、アップル社の「iPhone」と「iPad」です。
今ではスマートフォン・タブレットという言葉も一般的になりましたが、当初は何でもスマホを見ると「これiPhone?」、タブレットを見れば「これってiPadですか?」と聞かれることが多かったのです。
これは「ヘッドホンステレオ=ウォークマン」と同じ現象ですよね。プレーヤー
このように、ソニーとアップルが比較されることが多いのですが、そこにはもうひとつの理由があります。
アップルが一時期の苦境から脱するきっかけとなり、後のiPhoneとiPadにつながっていく「iPod」が、ポータブル音楽プレーヤーとしてウォークマンに取って代わったのです。
今では、携帯型デジタル音楽プレーヤーを見ると、「それiPod?」と聞く人が多いと思います。
ソニーの「ウォークマン」とアップルの「iPod」(さらにiPhone、iPad)のヒットには、ひとつの共通点があります。
それは、「それまでになかった商品」だということです。
たとえば、昔々は音楽といえば、自宅やお店にあるステレオを通して聴くものでした。しかしウォークマンの登場によって、いつでもどこでも好きな音楽を楽しむことができるようになったわけです。
またiPodは、パソコン(Mac)でダウンロードした音楽を、同じようにいつでもどこでも楽しむことができる。デジタル時代のニーズを捉えた商品でした。
以降の商品は、全てウォークマンやiPodの「類似品」と受け取られてもおかしくはなく、そのため競争力は弱かったといえるでしょう。
それは、同じ「ウォークマン」の名を冠しながらも、デジタル音楽プレーヤーではiPodの後発となってしまったソニーの凋落が証明しています。
顧客のニーズを見つけ、新たな市場を開拓して利益を生み出すこと。
それこそがイノベーションを起こすマーケティングではないでしょうか。
全ての答えは、顧客と市場にあるのです。

マーケティングで最も重要な5つのポイント

では、実際に「イノベーションを起こすマーケティング」は、どのように行えばいいのでしょうか。
これはどのジャンルでも同様です。まずは次の3項目を調査・分析することから始まります。

1.ターゲットとしているのは、どんな顧客(市場)なのか
2.顧客が困っていること・欲しているものは何か
3.自社の強みとは何か:本当の意味での「差別化」とは?

上記の3項目について、詳しく見ていくことにしましょう。

ターゲットとしているのは、どんな顧客(市場)なのか

マーケティングの大前提は、顧客・市場側の論理に基づくことです。ただ、そのためには顧客・市場=自社のターゲットを把握しておかなければいけません
飲食店でいえば、カレーが好きな人のほとんどはカレー屋に行くでしょう。ハンバーガーが食べたければ、ハンバーガーショップに足を運びます。
簡単にいうと、カレーを好きな人に「どんなハンバーガーを食べたいのか?」と聞くのは、あまり適切ではないのです(もちろんハンバーガー好きをカレー屋に呼び込みたいのであれば別ですが)。
市場調査
そこでまずマーケティングは、お客様の分類から始まります。これを「セグメンテーション」と言います。セグメント(segment)とは区切り、区分という意味です。
セグメントは商品のジャンル分けだけではなく、エリア・性別・年齢なども対象となります。
エリアなら関東か関西か、性別は男性か女性か、年齢は10代・20代・30代・40代・50代……。
こうしたセグメントの動向を調査・分析し、ターゲット顧客を絞り、商品を開発・販売します。

顧客が困っていること・欲しているものは何か

セグメンテーション・ターゲットを絞り終えたら、次はそのターゲットのニーズを調査・分析します。
顧客が求めているのは何か? とはいっても、現在売られている商品のなかで「どれが欲しいか」を調べるだけでは、意味がありません。
正確な言い方をすると、「顧客はどんなことで困っているのか・どんなものを欲しているのか」を調べるのがマーケティングなのです。
「顧客はどんなことで困っているのか・どんなものを欲しているのか」を知るためには、自社の商品ジャンルについて、次の5項目に沿った調査を行うことです。

スピード感
費用感
機能面
デザイン性
社会的価値

スピード感

スピード感とは「早いかどうか」です。「早さ」にも様々なものがあります。
飲食店…注文した物が出てくるのが早いかどうか
インターネットプロバイダー…回線が速いかどうか
通信販売…商品の注文から配送・到着まで早いかどうか など。

もちろん、ジャンルによっては早くないほうが好まれることもあるでしょう。飲食店のコース料理だと、どれぐらいのスピードで次の料理が出てきたほうがよいのか。
その意味でも「どれぐらいのスピードがよいのか=スピード感」を調査します。

イノベーション

費用感

これも単に「安ければやすいほうがいい」というわけではありません。市場では需要と供給のバランスにより、適正価格が決まります。
また、「安い」「無料」では安心できないお客様もいます。「ある程度の価格でないと、しっかりとした商品なのか疑わしくなってしまう」ということです。
自社の商品の適正価格は、いくらぐらいのものなのか。その「費用感」を調査してください。

機能面

一部「スピード感」も含まれますが、全体的に「使いやすいかどうか」を調べます。
これはパソコンや家電、自動車など工業製品に限りません。
サービス業であれば「注文・相談しやすいかどうか」という、接客面やシステム面も加わります。
顧客から「同じ商品でも、もっと使いやすい物が欲しい」という意見があれば、商品の改善・開発の大チャンスです。

デザイン性

商品を購入する際の三大動機は、「早い」「安い」「うまい(使いやすい)」ですが、一方で「デザイン性」にこだわるお客様が多いのも事実です。
これは自動車や時計といった商品に対する嗜好性でもあります。使いやすい自動車よりも、カッコいい車に乗りたい。見やすいデジタル時計よりも、アンティークの時計がいい。
そうした顧客の嗜好性も、絶対に見逃してはいけません。
時計

社会的価値

デザイン性ともう一つ、「早い」「安い」「うまい(使いやすい)」とは異なる価値が市場には存在します。それは「社会的価値」です。グリーン車
ブランド力」、「ステータス」と言い換えることもできるでしょう。
たとえば、新幹線を利用するケースを考えてみてください。グリーン席と一般席では、料金もそれほど大きく離れているわけではありません。「早さ」でいえば、同じ車両ですから、目的地に到着する時間は同じです。
「機能性」の面では、確かにグリーン席のほうが幅も広く、乗りやすい。でも、それ以上に「グリーン車に乗っている」というステータスを感じませんか?
商品でいえば、「これを持っているだけで、注目を浴びる」というブランド力やステータスが高いものもあります。
この「社会的価値」も、消費者にとっては大切なニーズであることを覚えておいてください。

自社の強みとは何か:本当の意味での「差別化」とは?

多くのビジネス本では「差別化」という言葉が見られます。とはいえ、なかには企業経営における「差別化」を誤解している内容も少なくありません。
企業経営における「差別化」というと、よく「他社がやっていないことをする」と解釈される向きもありますが、全てがそうではありません。
「他社がやっていないこと」のなかには、顧客のニーズが存在しないものも含まれているからです。
ニーズがないから他社がやっていないことに手を伸ばし、自社が損失を被ってしまうのは、あまりにもったいない話ですよね。
業績悪化
本当の意味での「差別化」とは、「顧客のニーズが存在していながら、他社がやっていないこと(できないこと)を行う」というものです。
ただ、注意しておかなければいけないのは、「自社もできないこと」に無理やりチャレンジしても、同じ様に損失を被る可能性が高くなります。
そこで、まずは「自社の強み」を知ることが重要です。
自社のイメージはどんなものか、自社の商品はどんな理由で買われているのか……市場の声を通じてこそ、自社の強みを知ることができます
反対に、市場の意見を無視して「自社の強みはコレだ!」と一方的に主張しても、その声は消費者には届きません。顧客がそれを求めていないからです。
成功する戦略・失敗する戦略とは?』でも書いたように、成功する戦略とは「顧客のニーズに対して自社の強みを売り込んでいくこと」です。
まずはマーケティングで顧客のニーズと、自社の強みを知ることが、成功する戦略への第一歩だといえるでしょう。

「ドライ戦争」に見るマーケティングの成功

ビール業界の「ドライ戦争」をご存じでしょうか?
1988年、ビールメーカーのアサヒが、「それまでにないコクとキレ」がある、世界初の辛口ビール『アサヒスーパードライ』を発表。大ヒット商品となりました。
続いて他社もドライビール商品を開発・販売しましたが、やはり売上で「世界初のドライビール」を上回ることができず、文字通りアサヒのひとり勝ちとなったのです。
この時、なぜアサヒが「世界初のドライビール」を発売することができたのか。それはアサヒが1984年と1985年の2年間にわたった市場調査の結果によるものと言われています。
1982年にアサヒビールの社長に就任した村井勉氏は、過去に東洋工業(現マツダ)の再建を2年半で成し遂げた人物です。
その村井氏は東京と大阪で実施した味覚調査の結果、「若い世代を中心として、大半の消費者がビールにコクとキレを求めている」と分かり、すぐさま過去になかった「苦みが強い重い味」のビールを開発したと言われています。
これこそが、まさに「マーケティング」成功の最たる例ではないでしょうか。
成功
マーケティングとは、市場調査とその分析です。それが企業側の論理のみで行われては、せっかくの調査と分析も意味を成さないでしょう。
ソニーのウォークマンも、アップルのiPodも、アサヒのスーパードライも、市場における顧客のニーズを捉え、求められている商品を開発したことで、大ヒットにつながったのです。
企業側の論理ではなく、常に顧客・市場側の論理に基づいたマーケティングを行うことで、新しい商品・市場の形成=イノベーションは起こるものなのですから。

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